「光陰矢の如し」…気が付けば、2019年も残すところあと1か月、ここ最近、寄る年波(ビッグウェーブ)にしっかり乗ってしまっている自分を実感する今日この頃、弊社ブログをご覧の皆さまはいかがお過ごしでしょうか?

こんにちは、きびだんごの制作担当・濱崎です。

日本のスマートフォン市場において、単一メーカー・単一ブランドとしては、世界的に見ても異例な約5割ものシェアを誇るiPhone。
そのiPhone(iPad)の心臓部、iOS(iPadOS)が先日の大型アップデートで、ユーザーによる任意の書体(フォント)を導入(インストール)できる新機能が追加されました。

これまで端末にあらかじめインストールされた、限られた書体の中でしかできなかった文字表現の幅が、ここにきてグッと広がるわけですから、この先、クリエイティブツールとしても、ビジネスツールとしてもiPhone(iPad)は欠かせないものになりそうです。

さて、そんなiPhoneにまつわるニュースと、今取り組んでいる仕事の中で書体選びに注力する機会があったことも相まって、今回は普段目に触れることが多い身近な存在でありながら、ことさら注目されることが少ない「書体」のお話をしてみたいと思います。

奥深き書体の世界

突然ですが、このブログをご愛読いただいている読者の皆さまは、いつも目にするあの看板、その本、このスマホ…そこで使われている様々な書体について、思いを馳せたことがありますか?

私は仕事柄、人一倍たくさんの書体に触れる機会があり、世の中にあふれる書体のカタチ、使い方、組み合わせなどが気になって仕方ありません。
数多ある書体の中から、「どうしてその書体を選んだのか?」「なぜこの組み合わせなのか?」「どう言ったニュアンスを伝えようとしているのか?」などの「なぜ?」から、「この書体使いはないかな…」「この組み合わせ・組み方はキレイだな…」「書体だけでここまで表現できるなんてスゴイ!」などの「なるほど!」まで、取り上げれば枚挙に暇がありません。

もうここまで来ると、ある意味職業病とも言えなくもない状態ですが、文字列として読むと意味は変わらないのに、書体を変えるだけで、その表情や趣、さらには印象までもが変わる、そして、ただの文字列だったものに見た目も華やかな彩(イメージ)が与えられることに大きな魅力と醍醐味を私は感じています。

「同じ文意であっても、その印象は書体によって大きく変わる」
どちらかと言えば、おざなりにされがちな書体の選定…でも、ちょっとしたひと手間で、これまでとは見違えたような文字表現を実現する秘訣を後ほどご紹介します。

ところで、「書体」と一言で言ってしまうと大したことないように聞こえますが、その源流は字形が刻まれた木製や金属製の文字型を並べて版として組んだものを印刷する活版印刷における、その文字型、いわゆる「活字」に行き着きます。
「活字」を使った印刷が歴史上に登場するのは、遡ること11世紀の中国、北宋の時代。13世紀末には日本へも活字の技術が伝わり、19世紀末には活版印刷が普及、その後、日本の印刷を支えてきました。
しかし、時代の荒波に抗うことができず、新技術の登場とその作業工程の煩雑さから、今やこの日本における活版印刷は風前の灯なのです。
それでもなお、活版印刷で培われ、洗練され、愛された活字は、その面影をデジタルフォントの世界に移し、私たちに文字表現の素晴らしさを教えてくれています。

その一方で、書体のデジタル化の波は、新しい潮流を生み出しました。
これまでは、もっぱらフォントベンダーと呼ばれるフォント(書体)を製作・販売する会社から提供されることが多かった書体たちですが、フォント製作ツールの充実などで、個人でもフォント(書体)を製作・配布ができる環境が整ったことに、そのきっかけを求めることができます。
フォントデザイナーとして、これまでの常識に囚われない斬新で独創的な発想から生み出される、彼らがデザインするフォントは書体の世界に新風を巻き起こし、次々と生み出される秀逸な選択肢は、書体選びをますます悩ましいものにさせてくれそうです。

WEBフォントがやってきた、ヤァ!ヤァ!ヤァ!

ひと昔前、WEBにおける書体事情は寂しいものでした。
もちろん、PCやスマホにあらかじめインストールされた書体を指定することで、ある程度の文字表現は可能だったものの、WEBブラウザが端末の環境に大きく依存することもあって、WEB上で書体を駆使した、デザイナーが意図した表現をするには幾許かの制約がありました。このような事情の遠因となっていた技術的側面もあって、WEBにおける文字の表現力・可読性は「紙以下」と言われて久しい時代が続きました。

そんな中、2010年にGoogle社がWEBフォントサービスの提供を開始したのを皮切りに、2010年から2011年にかけて日本語に対応したWEBフォントサービスが始まり、2014年にはGoogle Fontsも日本語に対応しました。現在では有料サービスも含めると、紙メディアで使われる書体と遜色がないくらいの充実したラインナップが提供されています。

このWEBフォントの誕生によって、WEBにおける文字表現は格段に向上し、端末に依存しない形で、デザイナーが意図する流麗なものに仕上げることを可能とし、WEBにおける文字の表現力・可読性は飛躍的に向上しました。

書体選びのワンポイントアドバイス

書体は、その形や作りによって、いくつかの種類に分類されます。
その代表的なものとして、「ゴシック体」と「明朝体」があります。皆さまも、この2種類の書体を目にする機会はもちろん、実際仕事上でも使われることも多いでしょう。

しかし、たった2種類の中から選ぶだけなのに、その使い分けは、あまり気にすることなく、何となく選んでいる、という方が大半のはず…。

そんな書体選びを難しくさせている要因は、「ゴシック体(もしくは明朝体)」を冠する同一種であったとしても、書体によってその良し悪しがあり、その差異を判別しにくいことにあるのと、書体が持つ性格(印象)を理解できていないことにあるのではないでしょうか?
しかも、同一種の書体が1つの端末の中に複数個用意されているから、話をさらにややこしいものにさせています。

そこで、まずは「ゴシック体」と「明朝体」がそれぞれ持っている性格(印象)を分析してみましょう。

「ゴシック体」の性格(印象)

  • 「モダン」「力強い」「カジュアル」「親しみやすさ」
  • 見出しやタイトルに適している
  • 可読性を確保しやすい
  • 年齢性別を問わない

「明朝体」の性格(印象)

  • 「格調高い」「エレガント」「信頼感」「高級感」
  • 本文に適している
  • 読む環境・人によっては、読みづらさを感じる
  • 大人向け

このことから、書体にも適材適所があって、TPOに応じた書体選びをすることで、より訴求力の高いイメージ通りのものに仕上げられる、ということになりそうです。
逆に、そこから外れてしまえば、ダサくてちぐはぐなものに仕上がってしまうことになるのです。

このことを踏まえた上で導き出される「書体選びのワンポイントアドバイス」は次のとおり。

①伝える相手・伝えたい内容などに応じた書体を選ぶ
②太さ(ウェイト)のバリエーションが多い書体を選ぶ
③強弱・メリハリを付けたいときは、基本的に同一書体の太さ(ウェイト)違いに
④見出し・本文などで使う書体は、それぞれ同一のものに
⑤書体の種類は可能な限り絞る、統一する
⑥「ゴシック体・明朝体」以外の書体を使うときはワンポイントで!いろんな書体を多用しない

そして、書体の良し悪しなんてわからないよ、とお嘆きのあなた…大丈夫です!
そんなあなたにオススメしたいOS別プリインストール書体もしっかり紹介させてもらいます。

Windows10

  • 「ゴシック体」=游ゴシック
  • 「明朝体」=游明朝

macOS

  • 「ゴシック体」=ヒラギノ角ゴシック
  • 「明朝体」=游明朝

そして、Windowsユーザーの方で絶対NGなのが、MSゴシック(MS Pゴシック)・MS明朝(MS P明朝)を選ぶこと。
プロポーションも洗練されておらず、上述の書体と比べるとかなり見劣りしますし、太さ(ウェイト)も揃っていません。

書体の性格(印象)、書体の選び方・使い方、美しい書体…これさえしっかり押さえておけば、あなたの文字表現はグッと良くなること間違いなしです!

最後に

今回は『磨けば光る?ちょっとしたひと手間をかけるだけで見違えたようになる書体のお話』と題して、何気ない日常に溢れる書体にまつわる四方山話をお届けしました。

書体の使い方次第で、同じ文意であっても、その印象は書体によって大きく変わる…そんな書体の奥深さにちょっとでも注目していただける機会が増えると幸いです。

弊社では、「WEBデザイン/ホームページ制作」をはじめ、印刷物の制作にも対応できますので、お気軽にご相談ください。